トルコ
トルコ最大の都市イスタンブールは、東西文化の架け橋といわれます。街全体がボスポラス海峡を境にふたつに分かれており、一方がアジア、もう一方がヨーロッパに属します。
ここは、世界で唯一アジアとヨーロッパにまたがる街なのです。
しかもこの街はローマ帝国、ビザンチン帝国、そしてオスマン・トルコ帝国の3つの帝都となった歴史を持ちます。
ビザンチウム、コンスタンチノープル、そしてイスタンブール、と名前を変えて長い歴史は、今もその面影を残します。
ガラタ橋を歩くと、その国際性・・・人種のるつぼイスタンブールを実感するはずです。
トルコ人、アルメニア人、アラブ人・・・シルクロードの終点であり、オリエント急行の終着駅であるこの街は根っからの国際都市なのです。
このような地理的、歴史的特異性からでしょう、イスタンブールには独特のエキゾチックな雰囲気が漂い、それはこの国の豊かな食文化にも反映しています。
オリーブオイル
オリーブオイルは、トルコ料理で最も多く使用されている調味料です。オリーブオイルの消費が世界で最も多いのは地中海のギリシアだそうですが、トルコもそれに負けず劣らずオリーブオイルを愛用する国民なのです。
メゼの代表「デイティンヤール・セブゼ・ブケッティ」は、バラエティ豊かな野菜などの食材をたっぷりのオリーブオイルに漬け込み、贅沢に盛り合わせたものです。
メインの料理でもオリーブオイルは活躍します。
「タヴィック・ソテ」は、鶏肉のオリーブオイル煮込みです。
ロカンタという、トルコの大衆食堂の定番メニュー。
鶏肉と、トマトなどの野菜をオリーブオイルで煮込んだものなのですが、そのたっぷりのオリーブオイルにもかかわらず、さっぱりとしているのが不思議です。
サラダにも、ワインビネガーといっしょにたっぷり・・・食べ終わったあとにお皿にたまったオイルをみるとギョッとするほどです。
ドレッシングなどには、バージンオイルが用いられます。
アラ・スジャック
オードブル(前菜)のことをトルコ料理では、メゼといいます。メゼには冷たいメゼ(冷菜)と温かいメゼ(温菜)があり、トルコ料理では、まず冷たいメゼをいただいたあと、メインの料理の前に温かいメゼをいただき、これをアラ・スジャックと呼んでいます。
トルコ語で「食事の間」を意味します。
そもそも冷たいメゼがオリーブオイルたっぷりで、それだけで頭のなかでカロリー計算をしてしまいそうなのですが、この温かいメゼがそれを上回るボリュームなのです。
バターやチーズをふんだんに用っているのが特徴です。
また、「カラマル・タヴァ」(イカのフライ)や「ミディエ・ラヴァ」(ムール貝のフライ)など、揚げ物が多いことにも気づきます。
温かいメゼの定番は、ユフカという薄い生地でチーズやパセリなどを巻いて揚げた「ボレク」です。
葉巻のような形をしていることから、「シガラ・ボレイ」(葉巻型のボレイ)と呼ばれるのは、白チーズとパセリをユフカで巻いて揚げた、温かいメゼです。
軽食
トルコ料理にはアジア的要素と地中海的要素が融合しています。それは、レストランのきちんとした食事よりもちょっとしたおやつ感覚で食べられる軽食やスナック、あるいは家庭料理によりいっそう見られる気がします。
たとえば、一見したところ、小型版のギョウザか、ラビオリ(袋状のパスタにひき肉や野菜、チーズなどを詰めて焼いたイタリア料理)といった感じの「マントゥ」は、中央アナトリアの代表的な家庭料理です。
中国のギョウザは、おしょうゆとラー油でいただきますよね、イタリアのラビオリなら、トマトソースやホワイトソース、といったところでしょうか。
トルコのマントゥは、ヨーグルトをかけていただきます。
トルコでは、オリーブオイルとワインビナガーをドレッシング代わりにして野菜にかけていただくことが多いのですが(そのため、サラダといえども侮れないカロリーに到達します)、ヨーグルトも野菜や肉料理のドレッシング、ソース代わりによく用いられます。
マントゥは、トルコのおふくろの味といわれるほど、トルコ人にとっては懐かしい味なのです。
パンとお米
トルコでは、お米も食べますが、主食はパンです。トルコの街中を歩いていると、リング状の、ゴマがたっぷりかかったパンを売っている屋台をよくみかけます。
ときには、大きな洗濯籠のようななかにパンを山積みにして頭に載せて歩きながら売っている人もいます。
近くを通るだけでゴマの香りが漂い、ついつい誘われてしまいます。
このパンは、「シミット」といい、噛み応え充分の固めのパンです。
見た通り、かなりのボリュームです。
一般に家庭やレストランなどでは、バケットタイプのパンが主流です。
フランスパンを幾分ずんぐりさせたような感じでしょうか。
これは「エキメッキ」というパンで、レストランや町の食堂「ロカンタ」では通常、食べ放題です。
その他、イタリアのピザの原型とも言われるのが、「ビデ」です。
丸い、イタリアのピザと異なり、トルコでは細長く、生地は薄いパンです。
とろりとしたチーズが絶妙のトルコのスナックです。
キョフテ
「キョフテ」とは、トルコ風の肉ダンゴです。「ケバブ」(焼肉)と並ぶ、トルコの肉料理の定番です。
ケバブが焼いたり、煮たり、野菜と組み合わせたり、とバラエティに富んでいたように、キョフテにも色々なパターンがあり、メゼ(前菜)として冷たくして(冷菜)、あるいは温かくして(温菜)いただいたり、メインの肉料理としていただいたり、とさまざまです。
最もシンプルなのは、「ウズガラ・キョフテ」(焼きキョフテ)です。
平べったい肉ダンゴ・・・まさにハンバーグそのものです・・・を焼いただけですが、お肉の風味が生きてかえって味わいの深い一品です。
「カドゥン・ブドゥ・キョフテ」は、揚げたキョフテなのですが、「貴婦人の太もも風キョフテ」というなんともユニークな名前をいただいている一品です。
その柔らかでジューシーな味わいがクセになりそう・・・ひょっとしたらそこがこの名前の由来なのかもしれませんね。